あなただけ見つめてる

コンカフェ狂いのOLの日記

推しと初めておでかけをした

ハロウィンなんて、一生無縁のイベントだと思っていた。
コンカフェ界隈にとってハロウィンは一大イベントで、推しの店も例外ではなかった。
最初はあまり行く気がなかったけれど、推しが強いて言えばこれかな~と挙げた仮装候補が、「いつか推しに着てほしいな~」と密かに思っていた衣装だったので、またもや心を見透かされたことにもはや恐怖を覚えながら、わたしは意気揚々と店へ向かった。

 

ハロウィン期間限定で、特定のボトルを入れれば好きなキャストとプリクラを撮ることができる特典があった。
生誕祭のときの分割払いもまだ始まってすらいないので、プリクラを撮れることは羨ましかったけれど、ボトルを入れる気は更々なかった。

推しの仮装姿はかっこいいどころの騒ぎではなかった。あまりにも罪深かったので、他のキャストさんが「○○くんかっこいいね!」と話しかけてくれるたび、「かっこいいどころの騒ぎじゃないですよ!」と返す面倒くさいオタクと化した。
ハロウィンは縁がないどころかむしろ嫌っていて、パリピどもが騒ぐことも一因だけれど、安くさい仮装や顔と衣装が不釣り合いな人がゴロゴロいることが恐ろしかった(失礼……)。
推しの仮装はもはや仮装ではなく正装だった。心も身体も、その衣装を着ることになりきっていた。あまりにも違和感がないので、新規のお客さんが「なんであの人だけ仮装じゃないの?」みたいな顔をしていた。

 

推し自らボトルを勧めてくることはあまりなかった。むしろわたしが通い始めの頃にボトルを入れたいと言ったところ、「ああいうのはお金使いたくて仕方ない人が入れるものだから入れなくていいよ」と止めてきた。
こういう特典もあるよと話を振ってくれたのは別のキャストさんだった。ちなみにいくらなんですか?と聞いたわたしに飛び込んできたのは、あまりにも破格すぎる値段だった。思わず「実質タダみたいなもんじゃないですか!!」と叫んだら、推し以外のキャストさん何人かにドン引きされたから、全然破格ではないけれど。推しとプリクラが撮れる権利(お酒もついてくるけど)と考えたら、あまりにもお得すぎた。
次の瞬間、わたしは財布まるごと担保にし、お金をおろしにコンビニへと走った。


推しとゲーセンへ向かう道中、今までの人生で得た感情すべてが一気に襲ってきた。
プリクラを撮る間はわたしがひたすらにはしゃいでいた。高校生の頃、好きで好きで仕方なかった人と一度だけデートをしたときと全く同じテンションだった。こんなにときめく時間がやってくるなんて、推しと出逢う前は思ってもいなかった。

ゲーセンから帰る途中、推しは自身のこれからの展望などを話してくれた。わたしを信頼して話してくれることが何よりも嬉しくて、この夜が永遠に続いてほしいと思った。

 

その日はオープンから店にいて、何度か帰ろうとしたけれど何で帰るの?と推しから圧をかけられ、なんだかんだで6時間滞在した。
初のオーラスをしようかとも思ったけれど、スマホの充電が無かったのと、終盤推しがだいぶ酔っ払っていてかわいいと思う反面ハラハラする気持ちもあったので、帰ることにした。
推しは今までに見たことないような、なんだか寂しそうな顔で、「○○ちゃんとプリクラ撮りに行けたの、夢みたいだった。まさか行けるなんて思っていなかったから」と言ってくれた。そう言ってくれることがわたしにとって夢みたいな出来事で、思い出すたびに涙が出てくる。
その後も推しはずっとプリクラが楽しかったことをツイートしていた。
お酒で目が冴えているのと興奮状態で眠れない中、何度も推しの笑顔を思い出して、あの笑顔を一生守っていきたいと思った。